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東西南北舎

東西南北舎は東西南北人の活動に伴い生成したテクスト群の集積地である。「東西南北人」は福岡の儒者亀井南溟が秘蔵した細川林谷篆刻の銅印。南溟の死後、息子の亀井昭陽から、原古処、原釆蘋、土屋蕭海、長三洲へと伝わり、三洲の長男、長壽吉の手を経て現在は福岡県朝倉市の秋月郷土館に伝承されたもの。私の東西南北人は勝手な僭称であるが、願わくば、東西南北に憚ることのない庵舎とならんことを祈念してその名を流用させて頂いた。

   

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「氷菓」完結 Regionalismの再構築

 京都アニメーション制作の「氷菓」(全22話+1話(OVA)原作・構成協力:米澤穂信、監督:武本康弘)が完結した(既に先週のことだが)。
 「涼宮ハルヒの憂鬱」以降、雨後の筍の如く粗製乱造されている学園サークルもののアニメーションだが、この春~夏の期間だけも「Tari Tari」、「ココロ・コネクト」等といった作品が制作されている。これらの作品はいずれも5人グループのクラブ活動を描き、しかもその人員構成は大概女3人、男2人という涼宮ハルヒシリーズの男女構成比を踏襲している。
 しかし「氷菓」(原作は未読なのであくまでもアニメーションに準じて語るが)はこれと異なる女2、男2の4人の構成を取り、高校生男女2組が所属する古典部の1年間を描いている。本作の舞台は、飛騨高山をモデルとした山間の街神山市で、そこに所在する進学校の神山高校への新入生4人が主人公グループを構成している。
 その4人とは、生活上の省エネルギーを信条とするが、論理的な推理能力を有しているため、己の信条に反してしばしば探偵役を務めてしまうことになる折木奉太郎、豪農千反田家の一人娘で才色兼備の優等生、野生動物の如き鋭敏な感覚器官と無邪気な好奇心、そして素晴らしい料理の腕前を有する千反田える、奉太郎の友人で歩くデータベースを自認するも「データベースは結論を出せない」を信条とする福部里志、中学生の頃から福部里志に好意を寄せつつ、当の里志からはぐらかされ続けている図書委員で漫画研究会にも所属する伊原摩耶花である。
 本作は、この4人の古典部員が、その日常に遭遇する些細な謎をめぐるミステリーとなっており、それは例えば、神山高校の文化祭が何故「カンヤ祭」と呼ばれているのか、とか、文化祭で生じた悪意のみられない連続窃盗事件の犯人は誰か、といった形で出来するのだが、これらの謎や事件に対して、えるの「私、気になります」という言葉が発端となり、その無邪気な好奇心と、天然系の萌要素満載の追及に抗えない奉太郎が、それらの謎を解き明かしていく構成である。
 「原作に忠実に」をひとつの格率としている観のある京都アニメーションだが、本作もその例外ではないようで、描写の丁寧さはおそらく原作由来だろうが、神山市の風景描写や、古典部員たちの日常描写、そしてさりげなく丁寧な伏線の提示が見事であり、上質な時間の醸成に成功している。そして、彼らの1年間を通して、今地方に生きるということがどういうことか、という本作のサブテーマが浮き上がってくるように設えられている。

 最終話「遠まわりする雛」は、地元の伝統行事である「生き雛祭」で生雛を務めることになった千反田えるは、その傘持ち役を奉太郎に依頼するが、当初生雛の行列が通る予定の橋が工事で通れなくなっており、何故そんなことになってしまったのかが解き明かされるべき謎としてストーリーの主軸を成している。その謎は見事に奉太郎によって解き明かされるが、その帰り道、奉太郎と並んで歩くえるは、何故、今日奉太郎に来てもらったのかを告白する。

(える)無事大学に進学しても、私はここへ戻ってきます。
    どんなルートを辿っても私の終着点はここ、ここなんです。
(中略)
(える)私はここに戻ることをいやだとも、悲しいとも思っていません。
    千反田の娘として、相応の役割を果たしたいと思っています。
    そのための方法をずっと考えていました。
(奉太郎)方法、ねぇ...
(える)二つあると思います。
    ひとつは商品価値の高い作物を作ることでみんなで豊かになる方法、
    もうひとつは経営的戦略眼で経営を効率化し、みんなで貧しくならない方法、
    私は結局前者を選ぶことにしました。
(奉太郎)そのための理系選択か。
(える)はい。
(奉太郎)確かに、後のほうはあまりお前に向いていない気がする。
(える)ふっ。文化祭のとき、皆さんにさんざお手数をおかけしてわかりました。
    私、多分会社経営には向いていません。
(奉太郎)そうだな、そう思う、うん?
(える)見てください、折木さん、ここが私の場所です。水と土しかありません。
    人もだんだん老い、疲れてきています。
    私はここを最高に美しいとは思いません。
    可能性に満ちているとも思っていません。
    でも...折木さんに紹介したかったんです。
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プロフィール

HN:
東西南北人(中島久夫)
性別:
男性
自己紹介:
なお、本ブログに関するお問い合わせ等につきましては、以下のメール・アドレスまでお寄せください。
island04jp@gmail.com

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