監督は岸誠二、原作は田中ロミオによるライトノベル。
現在の人類が衰退して数世紀を経た世界で、調停官となった旧人類の少女(わたし)と、新人類の「妖精さん」との交流を描いた物語である。
ジャパニメーションのみならず、サブカル系の表現で「人類」という用語が採用されている場合、それはたいてい「日本」や「日本人」の換喩となっている。それはあのオタク第一世代を生み出した「宇宙戦艦ヤマト」(今、折しもそれが「宇宙戦艦ヤマト2199」としてリメイクされているが)等に顕著だが、本作もその枠組み自体を免れるものではない。つまり、これは「日本は衰退しました」と読み取ることができる。
しかし、「人類は衰退しました」がユニークなのは、それをシニカルな表現手法として採用している点にある。その意味では、本作はかなり異色な作品ということができる。
そこに描かれているのは、一見メルヘンチックでのどかな世界であるが、新人類として地球の覇権を握った「妖精さん」は人類と異なる生存原理に貫かれているようで、ユーモラスかつ不可解な存在として旧人類を翻弄している。
主人公の「わたし」は、その妖精さんやそれに翻弄される旧人類の愚かさにシニックな視線を向けつつ、自らも調停官としてそのドタバタに巻き込まれていく。
なお、本作の原作をSF作家の野尻抱介はシンギュラリティ(技術的特異点)SFとして評価しているそうである。
技術的特異点とは、「未来研究において、人類の技術開発の歴史から推測して得られる未来のモデルの正確かつ信頼できる限界(「事象の地平面」)」(Wikipedia)であり、SFという文学ジャンルは、確かにそのような特異点にかかる描写をひとつのパラダイムとしてきた。
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