フジテレビ、ノイタミナ枠で放送中のアニメーション、PSYCHO-PASSが佳境に入ってきた。
総監督は「踊る大捜査線」の本広克行、監督は塩谷直義、ストーリー原案及び脚本は「魔法少女まどか☆マギカ」や「Fate Zero」の虚淵玄、そしてアニメーション制作はプロダクションIG。
物語の舞台は、西暦2112年の東京、人間の心理状態や性格的傾向を計測し、数値化できるようになった世界。そこではあらゆる心理傾向が、シビュラシステムと呼ばれる包括的生涯福祉支援システムによって計測管理され、人々はそのシステムのサービスに全面的に依存する生存様式を採用している。
シビュラシステムのメカニズムは、「サイマティックスキャンによって計測した生体力場から市民の精神状態を科学的に分析し、得られるデータをPSYCHO-PASSとして数値化、そこから導かれた深層心理や職業適性を提供する」と説明されており、人々は有害なストレスから解放された「理想的な人生」を送るため、その数値を指標として生きている。そして、そこでは犯罪に関する蓋然性についても「犯罪係数」というパラメーターとして数値化されており、たとえ罪を犯していない者でも、その値が規定値を超えれば「潜在犯」として裁かれることになる。
本作は、そのような世界において犯罪捜査に携わる厚生省公安局所属の刑事達の物語であるが、その捜査体制は、監視官と執行官という二つの階級に分けられた人々によって構成されている。実質的な捜査を行う刑事が執行官だが、彼らは高い犯罪係数を持つ潜在犯であり、常に厳しい監視下に置かれている。それに対して監視官は、執行官の上司として捜査活動の全責任を負う刑事。彼らはその資質として犯罪係数の低さによって裏付けられた善良かつ健全な精神と模範的な社会性、更に優れた知性と判断力を兼ね備えている者とされているが、犯罪者や執行官の歪んだ精神にさらされる環境ゆえに犯罪係数を高める危険性がある。
彼ら監視官と執行官は、ドミネーターと呼ばれる、シビュラシステムの眼というべき携帯型心理診断鎮圧執行システムを武器として犯罪捜査に当たるのだが、ドミネーターは、シビュラシステムに優先的リンクをしており、対象に照準を向けることで瞬時に犯罪係数を計測する機能を持つ。握っている者にだけ聞こえる指向性音声で状況や計測値を案内し、対象の犯罪係数が規定値に満たない場合は発砲できず、犯罪係数が規定値を越えていればセーフティが自動的に解除され、対象の状況にふさわしい段階に合わせて狙撃効果を選択・変更・変形するシステムが実装されている。
物語は、新米監視官として厚生省公安局に赴任してきた常守朱(つねもりあかね)の視点を通して、先輩監視官の宜野座伸元(ぎのざのぶちか)、一癖も二癖もある執行官たち、狡噛慎也(こうがみしんや)、征陸智己(まさおかともみ)、縢秀星(かがりしゅうせい)、六合塚弥生(くにづかやよい)の面々を中心に描かれる群像劇であるが、制作サイドがP.K.ディック原作のブレードランナーを意識したという、ディストピアとしてのバックグラウンド世界の構築が中々に秀逸である。
そして、敵対者として、シビュラシステムを超越した例外的犯罪者、槙島聖護(まきしましょうご)が登場する。彼は数々の凶悪犯罪者の影で悪を使嗾する者として暗躍するのだが、彼のPSYCHO-PASSの犯罪係数は常に規定値以下の反応しか示さず、ドミネーターの計測によっては犯罪者として裁くことができない。
従って、彼はシビュラシステムにとっては完全にユニークな特異点、常に白き者なのだ。
現在、12話まで放映され、漸く槙島聖護の特異性が明らかになったところだが、ここからどう展開していくのか、なかなか興味深い話になってきた。
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