たまたまブックオフで目に留まった作品で、作者の上田早夕里のことも全く知らなかったが、なかなかよくまとまった、久々の正統派SF巨編である。
海洋SFということでは、海外ではフランク・シェッツィングの「深海のYrr」、国内では藤崎慎吾の「ハイドゥナン」や「鯨の王」に比肩し得る巨篇であるが、これらの中では最もSF的なマインドに溢れた作品といえるか。
舞台設定は、21世紀の前半にホットプルームの活性化による海底隆起により、海水面が現在の水位より260mも上昇してしまうという未曾有の災厄に見舞われた人類が漸く立ち直りかけたおよそ500年後の世界。遺伝子操作により海上生活に適合した海上民と、従来通りの身体のまま特権的に陸上生活を送る陸上民との紛争が絶えないその世界をさらなる災厄が襲う...という先日亡くなった小松左京が得意とした災厄小説の衣鉢を継ぐかの如き展開。なかなか興味深い世界構築がなされています。
まあ、あとは読んだ方のお楽しみということで。
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