2003年の作品だが、今読むと、妙に予見的なところのあるSF。
本作は、テロにより北陸の原発でメルトダウンが発生した十数年後という舞台設定。
そのテロによる影響から、1人1台のウェアラブルコンピュータ(ワーコン)の保持と、リングシステムという地球を取り巻く環状通信衛生というインフラの整備により、厳格な個人認証制度というアーキテクチャが構築され、それによって統制された近未来の日本。
東浩紀が情報自由論で示した環境管理型権力をネガティブに具象化したような設定だが、おそらくここに描かれているような社会構成は、今のインターネット環境とスマートフォンでも、やろうと思えば構築できてしまうのではないだろうか。例えば、スマートフォンの携帯が義務化され、フェイスブックへの参加が義務化された社会を想定すれば、ここに描かれている社会との距離はさほど遠くはない。
それは兎も角、この小説の面白さは、ここに個人のアイデンティティと記憶の問題を絡めて、歴史の虚構性をめぐる陰謀劇を描き出している点にある。あまり書くとネタバレになってしまうので、興味のある方は一読されたい。
しかし、この作者といい、師匠筋に当たる谷甲州といい、シミュレーション小説はあまり感心しないのだが、まっとうなSFの方は結構面白い。
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