非常に手の込んだ冗句、だが、手が込み過ぎていて笑うに笑えないというのが正直なところか。
Self-Reference ENGINEとは、直訳すれば「自己言及の原動機」ということになるが、自己言及的な結構を取り入れた小説、というより物語と隣接する表現形式は古来より数多く、それらをイチイチ指摘しはじめると枚挙に暇がなくなる。そのような自己言及のパラッドクスを主題とすることは、この種の表現形式が孕むジャンル構成の危機において要請される典型的なモードであるということができる。この種の表現が要請しているのは、たいていの場合、読者論である。
本書はオムニバス短篇の集積によって構成された長篇SF小説ということになっている。勿論、その看板に偽りはないが、この形式も私の好みではないということは言っておく。
ここで内容を逐次言挙げすることはしない。その種のものが読みたい方は文庫版の佐々木敦の解説を繙けばそれで済むからである。
ただ、本書に関する印象を類比的に示しておくと、本書のエンジンは同じエンジンでも内燃機関のエンジンではなく、外燃機関のスターリングエンジン (Stirling engine)をイメージさせる。スターリングエンジンとは、シリンダー内のガスを外部からの加熱や冷却によってエネルギーを得る外燃機関で、理論的には高効率のエネルギー変換を可能にするシステムであることが早い段階から指摘されているのだが、実用性の点でさっぱり...というものである。
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