渡辺京二「逝きし世の面影」に感動した津田塾の「多文化・国際協力コース 国際ウェルネスユニット」三砂ちずるゼミの女子大生と渡辺京二の2日間のセッションの記録である。
具体的には、女子学生6人に卒論の梗概を語らせ、また、3人のゼミ卒業生に現況を語らせ、それをネタに御齢80歳の渡辺京二がいいたいことを言うという、ただそれだけの本である。いわば津田塾の女子大生が渡辺京二に説教のネタを提供し、そのネタを渡辺京二がうまそうに味わいながら、たんたんと説教する本である。
しかし、今こういう言葉を吐かせて渡辺京二の右に出る爺様は、そうは他にいないことも事実で、一読巻を置くこと能わず、天神の本屋で購入して読み始めたら、九州からの出張帰りで一気に読んでしまった。
セッションの終わりに、渡辺京二は「無名に埋没せよ」と題する説教をかましてくれるが、これがまた良い。
そこで渡辺は、一種の「観念的倒錯」を戒めているのだが、例えば、若かりし笠井潔が「テロルの現象学」で必死に乗り越えようとしたアポリアと同型の問題を、今どきのマジメな女子大生にしっかりと等身大の問題として認識させ、なおかつそこから解き放つ道を平明な言葉で指し示してしまうという、奇跡のような説教を行なってみせる。
恐るべき爺様である。
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