SPICA:おとめ座α星で学名はα Virginis(略称はα Vir)。春の夜に青白く輝く1等星である。連星(二重星を伴う四重分光連星の主星と伴星からなる五重連星)で、変光星(ケフェウス座β型変光星)でもある。-by Wikipedia
スピカは、乙女座の主星でなおかつ連星(肉眼ではひとつの星にしか見えない)であるという特徴から、昨今のライトノベルやコミック等で、しばしば恋愛のメタファーとして採り上げられているが、それらのスピカをライトモチーフとした作品群の中でも、本作は恋愛小説として白眉のものといっても良い。
作者に関する予備知識は全くなく、台風で電車が止まってしまった日に、足止めをくった北千住のブックオフで、「エレGY」「ヘドロ宇宙モデル」(いずれもKODANSHA BOX)とともに入手した。3作の中では本作が最も純度の高い結晶のような恋愛小説になりおおせていると思う。
ストーリーを言ってしまえば、一度失恋した同じ相手と再度の失恋に陥るというものだが、主人公(水井)はその二度目の絶望の中で、恋愛のどうしようもなさ(不可避であること、交換不能であること)と、恋愛において愛するということがいかに困難であるか(愛の不可能性)という背理による背骨を折られるような痛苦を通して、初めて恋人(遥香)の心の痛みに思い至る。
ベタな展開ではあるのだが、それを一気呵成に読ませる作者の筆力はなかなかのものであるとともに、本質的なものに届いているということができる。
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