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東西南北舎

東西南北舎は東西南北人の活動に伴い生成したテクスト群の集積地である。「東西南北人」は福岡の儒者亀井南溟が秘蔵した細川林谷篆刻の銅印。南溟の死後、息子の亀井昭陽から、原古処、原釆蘋、土屋蕭海、長三洲へと伝わり、三洲の長男、長壽吉の手を経て現在は福岡県朝倉市の秋月郷土館に伝承されたもの。私の東西南北人は勝手な僭称であるが、願わくば、東西南北に憚ることのない庵舎とならんことを祈念してその名を流用させて頂いた。

   

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「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか 開沼博著(青土社 2011年6月16日)

 先日、福島県相馬郡飯舘村に行く機会を得た。
 ご存知のように、飯舘村は2011年4月22日に計画的避難区域に指定されており、現在、住民の大半は村外に避難しており、村はほぼ無人の状況となっている。
 同地を訪れたのは初めてであったが、一見長閑な里山の間に拡がる田畑が無人の野と化し、秋晴れの陽光の中、恐ろしいほどに静まりかえっていた印象が強い。家々に人の影はなく、放棄された耕作地の至るところにススキやセイタカアワダチソウが繁茂し、秋の風に揺れていた。
 おそらく、家々の佇まいはあれほどの地震を経た割りには従前とさほどの違いはないように思えるのだが、無人であることにより、それは既に廃墟の様相を呈していた。

 本書は、東京大学の大学院生が3.11直前に取りまとめた修士論文であるが、福島の原子力発電所がどのようにしてその地に成立していったかを、丹念に調べ上げ、それが、大東亜戦争敗戦後の日本社会にとって、外部植民地を奪われ「内なるコロナイゼーション」のメカニズムにより発動し、やがて「自動化・自発化」していったという仮説のもとに考察を加えている。
 ここで「原子力ムラ」と呼ばれているものには、原子力発電所が立地してきたムラと、中央における産官学の原子力業界が構成する閉鎖的な社会構成とが掛け合わされており、それを繋ぐメディエーターとして地方行政が機能してきたのではないかと論じられている。
 著者の展開する社会学的議論の当否はさておき、ここで明らかにされている原子力ムラの構成は、この国で生きる限り、誰もが骨絡みの問題として直視せざるを得ない問題ということができる。
飯舘村の現状はその帰結の一つと言わざるを得ないものであるが、結論は何も出ていない。

 そういえば、脱原発論議が高まる中、かつて「反核異論」をものした吉本隆明が、脱原発異論を展開している。吉本の議論は、原子力そのものは人知が勝ち得たプロメテウスの火であり、それを今放棄することは人として生きることを放棄することと同義であるというものである。87歳にして吉本節健在というところではあるが、その議論を現実のものとして立たせるためには、今やこの国から失われてしまったようにみえる思考の強靭さが必要だと思われるがどうだろうか?
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東西南北人(中島久夫)
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