TVアニメーション『
正解するカド -KADO : The right answer』が面白い。
『正解するカド』は東映アニメーション制作のオリジナルアニメーションで、監督は『翠星のガルガンティア』の村田和也、脚本はSF作家の野崎まど、プロデューサーは『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の野口光一となっており、現在第7話までが放映されている。
『正解するカド』が描き出そうとしているのは、本格SFの王道ともいえる、ファースト・コンタクトと、それに伴う人類進化の可能性であり、ここまで放送された部分での掴みは文句なしといったところだ。今のところ、物語の構造は、A.C.クラークの『幼年期の終わり』や『宇宙のランデヴー』と類似した構成となっている。
2017年夏、羽田空港の上空から、一辺2,000mの巨大立方体が現れる。それは252人の乗った旅客機を飲みこむように羽田空港の滑走路上に接地する。その中から姿を現した、謎の存在・ヤハクィザシュニナと自称する人型の物体は人類との接触を試み始める。
その媒介となるのが、偶然旅客機に乗り合わせた、日本政府外務省、国連政策課の首席事務官、真道幸路朗だ。真道は外務省にその人ありと知られたタフ・ネゴシエイターであり、ヤハクィザシュニナが提唱する“世界の推進”のために働くことになる。
ヤハクィザシュニナとは、これまでに提示された情報によると、この宇宙の外、“異方”より来た多次元体であるが、その存在と意図は未だ謎に包まれている。しかし、ヤハクィザシュニナは、まず、異方から無限に電力を取り出すことができる装置、“ワム”を提示し、それを人類に供給することで、人類のエネルギー問題の全面的解決を図る。そして次に、人類に多次元的な存在感覚を可能にする装置、“サンサ”を提示し、人類の精神活動それ自体の変革を促す方向へと動き始める。
ここまでが第7話までのあらすじである。
ヤハクィザシュニナが人類に提示してみせるオーバー・テクノロジーの産物は、いわば楽園の果実であり、一見、それにより、個体存在の群体としての人類の欠如が埋められていく未来が志向されているように見えるが、果たしてそれらは人類の希望へと繋がっていくのだろうか。
クラークの時代から一世代下った今、閉塞感に包まれた社会状況の中、未来に希望を描き出すのは、より困難さを増している。この間、SFは、テクノロジーの追及そのものがもたらす逆生産性やディストピアの数々を描き出してきた挙句、ジャンルとしてのSFそれ自体の衰退を閲してきた訳だが、ここにきて、それを覆すかのような勢いがみられる。本作もその有力なる一翼となるのであろうか。
私から見ると、本作はいわば、クラーク等が提示してみせた「機械仕掛けの夢」(笠井潔)を正面から更新せんとする試みのように思える。本作は、ひとまず12話までの放映が予定されているようなので、作品総体の評価は完結を待たねば何ともいえないが、真に新たなる夢を紡ぎだせるかどうかについては、ここからの展開こそが正念場であろう。
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