TVアニメーション「蒼き鋼のアルペジオ-ARS NOVA-」は2013年10月から12月にかけて放映されたもので、現在放映されている劇場版の前半はこのTVシリーズの総集編となっており、後半には、TVシリーズ以降のオリジナルストーリーが展開されている。
原作はArk Performanceで、2009年11月から少年画報社の「ヤングキングアワーズ」に連載中のコミックだが、例によって私は読んでいない。
2039年、人類は温暖化に伴う急激な海面上昇により、地上での版図を大きく失い、それに呼応するかのように、霧を纏う謎の軍艦群「霧の艦隊」が世界各地の海洋に出現、見てくれは旧大日本帝国海軍の軍艦の外形そのままの軍艦を集めた「霧の艦隊」だが、搭載した超兵器で人類を攻撃し始めた。これに対して人類は持ちうる戦力を投入し、最終決戦「大海戦」に臨むも、「霧」の圧倒的な武力の前に脆くも敗れ去った、と設定されている。
TVシリーズの物語は「大海戦」から7年が経過し、すべての海域、運搬経路を「霧の艦隊」によって封鎖され、政治経済は崩壊、人類社会が疲弊の一途をたどっていた日本を舞台に始まる。日本の海洋技術総合学院の士官候補生・千早群像は「霧の艦隊」の潜水艦「イ401」とそのメンタルモデル「イオナ」(童女のような外形をしている)と出会う。政府の制止を振り切り2人?で出奔し、イオナ=イ401の艦長となった千早群像は、数人の海洋技術総合学院の同窓生をクルーとして従え、人類社会の中で唯一「霧の艦隊」に対抗し得る戦力となっていく。
日本国家から独立した千早群像とイ401のコンビは遊撃軍或いは傭兵のような立場で「霧の艦隊」と対峙することになるが、イ401の能力と群像の操艦により、次々と「霧の艦隊」の軍艦(ヒュウガ、ハルナ、キリシマ、タカオ等)を打ち破り、イオナとの接触によって、それらの敵対していた軍艦のメンタルモデル(いずれも若い女の子の外形をしている)に深刻な自己の存在への疑問を生じさせることで、彼女たちを味方に引き入れていく。
そのような中、日本政府は、「霧の艦隊」を打ち破ることのできる唯一の兵器である「振動魚雷」を開発、群像とイ401にそれを量産可能な国力を保持していると考えられるアメリカまで輸送するよう依頼してくる。振動魚雷の弾頭を開発したのはデザイン・チャイルドの蒔絵(まるっきりの童女である)だが、群像は彼女を日本政府内部の暗闘からイ401に保護し、アメリカに向かうことになる。
その行く手を阻もうと「霧の艦隊」のコンゴウとマヤ、そしてイ401の同型艦イ400とイ402が立ちふさがる。イ400とイ402によって、一度は群像が死の淵に立たされるが、その死に愕然とするイオナが自らを構成する全てのナノマテリアルを群像の生命維持に活用することで、群像を救い、ユニオンコアまで還元されてしまうが、そこに駆けつけたタカオがイオナと融合することで、イ401は新たな形態を得て復活する。
さらにコンゴウはマヤを率いて、イ401を討ち果たそうとするが、復活したイオナの直接的な接触に心を開かれ、イオナと和解することになる。ハワイを経由してアメリカのサン・ディエゴへ向かおうとするイ401の前には、さらに霧のアメリカ太平洋方面艦隊が立ちふさがるが、イオナと和解した異形のコンゴウが放つ超重力砲の一撃で、全て一掃されてしまう。
TVシリーズが描いていたのは、これらとの対決までであり、アメリカ到着後のストーリーは劇場版で語られることになった。
劇場版では、イ401とその仲間たちがアメリカに振動魚雷を届け、それは量産されるが、その試し打ちで「霧の艦隊」のフレッチャー級の駆逐艦1隻を葬ったところで、千早群像の指示で蒔絵が仕込んだブラックボックスが働き、生産された全ての振動弾頭が機能を停止してしまう。
千早群像は、振動弾頭はあくまでも抑止力としてその威力さえ示しておけば良いと考え、「霧の艦隊」との和解の途を探ろうとするが、そこに、「生徒会風紀委員長」を名乗るヒエイが立ちふさがる。そして、霧の艦隊の隠されていた意図が露になり、話は10月公開予定の続編「Cadenza」に引き継がれることになった。
一方、TVアニメ「艦隊これくしょん -艦これ-」はまだ始まったばかりである。原作は、角川ゲームスが開発し、DMM.comが配信しているブラウザゲーム。ゲーム内容は、大日本帝国海軍の艦艇を萌えキャラクターに擬人化した「艦娘」をゲーム中で集め、強化しながら敵と戦闘し勝利を目指すというもののようだが、こちらも例によって私はプレイしていない。
TVアニメは、現時点で4話までの放映といったところで、まだ、ストーリー展開を言挙げするほどの物語は提示されていない。第1話の冒頭、榊原良子の重厚な声色で海軍五省が読み上げられたのにはオッと思わされたが、その後の展開はちょっと引いてしまうような萌えアニメである。ひとまずは艦娘たちが集う鎮守府に着任した新米特型駆逐艦「吹雪」ちゃんの成長物語、といった構えである。
彼女たちは名前こそ「赤城」「加賀」等(航空母艦)、「長門」「陸奥」「金剛」「比叡」「霧島」「榛名」等(戦艦)、「川内」「神通」等(軽巡洋艦)、「睦月」「夕立」「如月」等(駆逐艦)といった旧帝国海軍の艦艇の名称を負わされているものの、彼女らの戦闘形態は足首にホバークラフトのようなエンジン(煙突?)を巻きつけ、手や背中、或いは大腿に主砲や魚雷発射管を背負い、まるで水上スキーでもやっているような形で水上を疾駆し戦うというもの。また、航空戦力は航空母艦が弓で放つ矢が艦上攻撃機や艦上爆撃機に変異して敵艦に攻撃を仕掛けている。
「蒼き鋼のアルペジオ」では曲がりなりにも、軍艦の形状を忠実に再現する意志が働いていたが、「艦これ」では砲塔や魚雷発射管、航空甲板のキレッパシ等の形状こそオリジナルの形状を留めているが、主体はあくまでも「艦娘」である。
これは正直、結構見るのがしんどい。ストーリーの展開は、ある程度太平洋戦争における海戦史を意識しているようだが、果たしてどうなることやら。
さて、この二作品に共通しているのは、旧帝国海軍の軍艦と萌えをモチーフとした点にあるが、「蒼き鋼のアルペジオ」がその形状に対するフェティシズムを押し通しながらSF的なファースト・コンタクトのテーマを隠喩したストーリーを展開しており、かなり無理矢理な感じは否めないものの、軍艦をモチーフとしてそのストーリーを構成する必然性を感じなくもない。
これに対して、「艦隊これくしょん -艦これ-」には、今のところ、なぜ軍艦なのか、といった必然性を見出せない。
これには戦車道というお稽古事の中で、リアルな擬似戦車戦(戦車版サバイバルゲーム)を繰り広げる女の子たちを描いてスマッシュ・ヒットとなった「ガールズ&パンツァー」の柳の下のどじょうを狙う意図があるのかもしれないが、艦娘たちが投じられている世界はお遊びではなく、戦没もありえる世界と設定されており、明らかに「ガールズ&パンツァー」とはストーリーの志向が異なっている。
現時点で評価できるものではないが、これはかなり痛い作品となりそうな予感がするのは私だけだろうか....
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